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ちょっと言語学

 実はフランスの大学と大学院で言語学を専攻していた私なのですが、別記事に挙げた例文について感じたことがあったのでここに記しておきます。ちょーっと理屈っぽい話になるかもしれませんので、苦手な方はパスしてください。

 
 猛禽に関するお勉強コーナーで、rapace という言葉は子供にも使える一般的な言葉だということを示すために以下のように書きました。引用します。

例えば、親子で山歩きをしていて、獲物に狙いを定めるかのように鳥が空を旋回しているのを見て子供がこういいます。

子供:   Regarde! Il y a un oiseau. 見て、鳥がいるよ。

親:   Oui, c'est un rapace. うん、猛禽だよ。 

 この例文は何気なく作ったのですが、日本語訳を書いていて変な気がしました。空を旋回している鳥を見て「鳥がいる」と日本語で言うでしょうか。人によって言語に対する感覚が違うので日本人全員が私と同じだと断定は出来ませんが、私は、この状況では子供は「鳥が飛んでいる」と言うのではないかと思います。「あそこに鳥がいる。」を使える状況は、木の枝に鳥がとまっている、庭にいる、鳥かごの中にいる、のようにある程度狭い範囲に「いる」場合ではないでしょうか。でも、このフランス語はこれでいいよなー?と思ったわけですが、なんだか腑に落ちなかったので、フランス語の母語話者である夫に聞いてみました。空を旋回している鳥を見て Regarde! Il y a un oiseau. と本当に言えるかどうか確かめたかったわけです。夫は質問の意味が最初分からず、私が「日本語では鳥が飛んでいる、のように言わないと変だからだ。」と言うと、「 Il y aを使って何が悪い。 飛んでいる?そんなことはフランス語では言わない。」と怒っていました。
 日本語の「いる」「ある」をフランス語では Il y a 〜の構文で表しますが、ちょっとずれがあるということですね。日本語の「いる」「ある」よりは使用範囲が広いということでしょう。

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11件のコメント

[C3] コメントありがとうございました

私の拙ブログに、コメント下さって、ありがとうございました。

はぁ・・・
何だか、ため息がでてしまうほど、とても素敵な
経歴をお持ちで、
しかも、ご主人は、フランスの方なのですね。
母語と同じレベルの外国語を持っていらして
その上で、他言語の勉強もしていらっしゃるなんて・・・
第2言語をお持ちの方は、言語習得の回路が出来ているから
第3、第4の言語習得も早いと、どこかで聞いたことがあります。羨ましい限りです。


フランス語関連の事は、まるで分かりませんが
そちらでの生活の事や、子育てのことなど
また、楽しみに拝見させて頂きたいなと
思っています。




[C4]

こんにちは。遊びに来ました〜。「フランス語の勉強」シリーズ、とっても役に立ちます! 日常会話以下のサバイバル・フランス語ならばどうにかなるあたしですが、きちっと勉強したことがないので、いつかしなくちゃ、いつしなくちゃで、結局全然勉強していません。まゆのさんのブログに出会ったのを切っ掛けに、他力本願で勉強できそう! ということで、「フランス語の勉強」シリーズをバンバンとお願いしま〜す!
  • 2007-07-26
  • Kmala KMAR
  • URL
  • 編集

[C5] Lizzieさんへ

 こちらこそ見に来て下さってありがとうございます。
いやー、そんな大したことないですよ。Lizzieさんこそ小さいお子さんがいるのにいろいろ努力されていて立派だと思います。
 私は世の多くの日本人と同じく、英語をやってからフランス語を始めた口ですが、文法をやっているときは、アルファベットが同じという以外で英語を勉強したメリットは何も感じませんでした。何かとフランス語のほうが煩わしく面倒だったからです。でも話し始めたら、英語を話し始めたときに比べて抵抗がなかったことを覚えています。理解の助けにはならなかったけど、理解したことを実践するには役立ったということですかね。でも、今度始めた言語はねー、まだ全然そういう段階じゃないんですよ。のんびり続けようと思っています。また見に来てくださいね。フランス生活についても紹介していこうと思っていますので。

[C6] Kmala KMARさんへ

 来てくださったんですね。「フランス語の勉強」シリーズ、喜んでくださって本当にうれしいです。これからも続けていこうと思います。こちらも知っていると思っても一応調べ直すことにしているので、新しい発見をすることもあるんですよ。今回は私の仏和辞典に間違いがあるのを見つけました。!!?ですよね。
 Kmala KMARさんの美しく知的なブログ、また見に行きますのでよろしく。

[C873] 主題

こんにちは。 Pingouin の記事から読み始めたのですが、勉強になるブログですね。

日本語とフランス語では文の主題を示す仕組みが少し違います。文頭に主題があり、焦点が文末に近い位置にあるのは共通ですが、日本語では主題に「は」を付けます。「鳥が飛んでる!」だと「鳥」が主題でないのは明らかなので、文全体が新情報であると分かります。一方フランス語では、文頭の名詞句は主題になります。"Un oiseau vole!" だと、「鳥は飛ぶ!」になってしまい、変です。"Il y a un oiseau!" だと un oiseau が新情報だと分かります。これの日本語訳は「鳥だ!」が一番近いのではないでしょうか。

[C874]

といっても実際の会話を聞いたわけではないので、間違っているかもしれません。
まゆのさんは言語学専攻だそうですが、どのような研究をされていたのですか。

[C875] tsさんへ

 tsさんは鳥の専門家だと思っていたのですが、言語学の専門なのですね。
 本当ですね。"Il y a un oiseau!" の日本語訳は「鳥だ!」が近いですね。そうですね。「鳥が」の鳥は既知の鳥ではない、不定の鳥ですよね。「鳥は」と言ったときはt定冠詞つきの鳥というか、話者とそれを聞いている者との間でどの鳥を指しているのかはっきりわかっている特定の鳥でしょう。あるいは鳥全般を指していることもありますよね。そういう意味で"Un oiseau vole!" という文はほぼ存在しえない文だと思います。「鳥は飛ぶ」ならL'oiseau vole.ですから。

 言語学で専攻してた分野は音韻論ですが、他分野と関連しており、形態論、統語論と音韻論の境界で研究をしていました。一番いろいろやっていたのは日本語の複合語の意味構造と音韻構造の関係についてです。 

[C876]

英語は主題表示に無関心なので、"Look! A bird is flying!" で何も問題はないですね。

生成音韻論ですか。フランス語はリエゾンや女性形やシュワー脱落など、面白い現象が多いですよね。私は半分、言語学的な興味からフランス語を学び始めたのですが、まだまだ語彙が足りず大して読めません。

[C877] tsさんへ

 主題表示に無関心な言語、本当ですね。言語によってこだわるところが違うのが面白いです。

 生成音韻論の延長でしたね。でも実はフランス語は音韻論的にはめぼしいものが何もない言語なんです。おっしゃるとおりリエゾン、エイリジオン、女性形、シュワなどありますが、どれも研究するまでもなくすぐ説明がついてしまいます。音韻論の初歩を説明するのに便利な言語ということでしょうか。
 言語学的な興味でフランス語ですか。ソシュール、マルティネ、ベンヴェニストあたりでしょうか。これ以外にも入門書で読みやすい本も出ています。言語学の知っている話をフランス語で読む、というのもいいですね。

[C878]

> でも実はフランス語は音韻論的にはめぼしいものが何もない言語なんです。
そうなんですか。最初に読んだのはフランソワ・デルのフランス語音韻論で、それでフランス語に興味を持ちました。リエゾンに関しては細部に関して今でも論文が出ているようです。例えば語末子音削除により規則的に男性形を説明できるにも関わらず、リエゾンできない子音を持つ形容詞がいくつかあります。 (Bonami, Olivier & Boyé, Gilles, 2005, "Construire le paradigme d'un adjectif")
a. un entretien chaud / *un chaud entretien
b. une ambiance chaude / une chaude ambiance
c. des entretiens chauds / de chauds entretiens
d. un débat chaud / un chaud débat
これなどは、生成音韻論で単純に説明するのは難しいのではないでしょうか。

[C881] tsさんへ

 リエゾン出来ない形容詞!本当ですね。気が付きませんでした。私は言語学の研究に足を突っ込んでいたのは2003−4年ぐらいまでですので、その論文は読んでいません。著者の一人を知っているので懐かしく思いました。フランス語の形容詞は位置によって意味が変わってくるのもあり、面白いですよね。
 François DELLの音韻論の本は私もずっと前ですが読みました。書き方が上手いので読みやすい本ですよね。もう退官されたかも、とも思いますが、この先生のセミナーに出ていました。言語学関係ではクリステヴァの本が手元にあるのですが、まだ読んでいないのでいずれ読みたいと思っています。入門的な本ですが、読み物として面白いらしいです。

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プロフィール

Author:まゆの
フランスに住み始めて早16年。フランス語に限らず語学や語学学習にはいつも関心を持っています。フランス生活についても、個人的な視点で書いていこうと思っています。家族はフランス人の夫プー、長女のえ(12歳)、長男チッチ(8歳)次女奈々(4歳)の5人、プラス2007年8月23日から飼い始めたうさぎのクッキー。

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