すいさんのブログ、「ねむたい小ウサギ」にて「ラテン語の夕べ」が催されまして、そちらに参加して参りました。(こう書くととても高尚な夕べであったかのような印象を与えますが、実は違います。私は、ラテン語って難しくて分からない、というような話をしていただけでして・・・。)
でもその中で思い出したのが、私の持っているラテン語の教科書です。これです。
久しぶりに出してきた本を眺めながら、今日はフランスのラテン語教育および古典語教育について書くことに決めました。
フランスでは5èmeと呼ばれる中学の2年め、年齢で言うと12歳からlangue ancienne (古典語) の授業があります。選択科目なので、希望した生徒のみが履修することになります。「古典語」ですから、ラテン語とギリシャ語の二つで、この2教科を教える先生はlettre classique(古典文学)というカテゴリーの教員試験を受けて任命されます。古典文学というカテゴリーで一つになっていますから、一人の先生がラテン語もギリシャ語も教える資格を持っていることになります。
昔は文系なら必修科目のようなもので、教養ある文人でラテン語の素養がないなどは考えられなかったと思いますが、現代では様子が変わってきたように思います。
私の周囲でラテン語を勉強したことのある人は、夫の家族、親戚の60歳以上の方々、夫自身、中学高校の古典文学の先生をしている友人・知人(30歳代から50歳代)、高校の哲学の先生であった知り合い。私は以前、中学・高校の第二・三外国語の日本語の教師をしていましたので、そのときは生徒でラテン語をやっている、やっていた、という子がいました。
私のそのころ勤めていた学校はその地方の名門校の一つで、ラテン語、ギリシャ語の授業について新聞記者が取材に来て、地方紙に記事が載ったことがあります。その記事が「今時、古臭いことをやっている時代錯誤な学校」とでも言いたげな内容で、校長がカンカンに怒っていました。
この事件は当時の私に二つのことを示唆しました。うちの学校が取材の対象に選ばれたということは、ラテン語・ギリシャ語の両方を教えている学校は数が少ないのではないかということと、校長は憤慨していましたが、時代遅れだと考えた新聞記者の記事がそのまま新聞に載ってしまうところからして、そのように考える人が多いのではないか、ということです。
その学校ではラテン語は中学の2年目の5ème と呼ばれる学年から、ギリシャ語は高校1年生にあたる2ndeと呼ばれる学年からでした。古典語がやりたいからその学校に入った、勉強させたいので子供をこの学校に入れた、という人が少数ではありましたがいて、他で教えているところが少ないのだな、とは感じていました。
今、長女が5èmeですが、長女の中学校はどうかと言いますと、古典語の授業は行っていません。ただ古典語を勉強したい生徒はCNEDという国の通信教育機関に学校から申し込み、学校教育の一環として通信教育を受けることができます。そして、父兄なのか引退された先生なのか分かりませんが、古典語の先生の資格を持っている人がいて、週一回、ボランティアで学校に来てくれて、通信教育で独習している生徒の相談に乗ってくれるんだそうです。CNEDの通信教育はどこにいても受けることが出来ますが、ボランティアのアドバイザーはない学校も多いと思いますので、古典語は、自分の学校で授業がなければ勉強しにくい環境になってきていると思います。ちなみに長女は「日本語もやっているし、バイオリンもあるから。」と言ってラテン語は選択していません。通信教育だというのもやる気を削がれる原因だったようです。
以上のように、身近で感じるのは、先生のポストが削減され古典語の授業を廃止する学校が出てきている、勉強したがる生徒も少なくなってきた、ということですが、実際はどうなのか、と思い、少し調べてみました。
2001年から2004年の資料しか見つからなかったので、今はひょっとしたらまた変わってきているのかもしれませんが、統計資料によると、中学生でラテン語を選択する生徒は19%で横ばい状態。全体のほぼ5分の一がラテン語を、学校内の授業なり通信教育なりで勉強していることになります。しかし高校になると生徒数は4%で、大幅に減少しています。ギリシャ語は中学で2%、高校になると1%に減っています。
ギリシャ語がラテン語に比べて少ないのは、もともと教えている学校が少ないからでしょうが、文字も違いとっつきにくいのも原因だと思います。また中学生の5分の一が勉強しているラテン語が高校生になると4%に減ってしまう原因としては以下のことが指摘されています。
中学生の5分の一が勉強しているならまだまだ選択教科としてはある程度の地位を保っているように私には見えますが、先生のポストが削減され、授業の廃止が進んでいるのは事実のようです。ポストの削減に反対するアソシエーションがあり、反対運動を行っているそうです。
最近、Prépaと呼ばれるグランド・エコール入学準備クラス(予備校みたいなところです。)の文系クラスではラテン語を必修にする、という案が出ているようですが、反対者もいるようです。
ラテン語が中等教育から消えることはないにしても、人気が急上昇することはなさそうな気がします。
ところで中学・高校生のラテン語の勉強を始める動機は何でしょうか。前にラテン語教師をしていた同僚に聞いたところでは、生徒の中には語源や言語の歴史に興味を持つ生徒もいて、学問的好奇心から始めることもあるそうです。でも大半は親に薦められて、というのが動機だそう。
親が薦める理由は、
ということだそうです。
ちなみに義母は長女にラテン語を勉強して欲しいようでした。理由は自分は理系でラテン語を勉強する機会を持たなかった、教養として欠けると思うこともあり今は勉強できなかったのを残念に思っている、ということで、上記で言えば4番目に当たりますね。
そういう影響でか、夫は5ème 、4èmeの2年間ラテン語を勉強したようです。先生が若くて美人だったという以外何も覚えていないようで、3èmèでやった記憶がなく、なぜ止めたのかも覚えていないんだとか。要するにどうでもいい教科だったわけですね。(このことは義母には言わないほうがいいですね。)
最初に写真で紹介したラテン語の本について書く予定でしたが、長くなりすぎるので別記事にします。
この記事を書くにあたり下記のサイトを参照しました。
http://www.sauv.net/effectifsla.php
http://www.ac-limoges.fr/article.php3?id_article=1047
http://artela.cnarela.free.fr/decembre00/compte-rendu-reunion-paris.html
Author:まゆの
フランスに住み始めて早16年。フランス語に限らず語学や語学学習にはいつも関心を持っています。フランス生活についても、個人的な視点で書いていこうと思っています。家族はフランス人の夫プー、長女のえ(12歳)、長男チッチ(8歳)次女奈々(4歳)の5人、プラス2007年8月23日から飼い始めたうさぎのクッキー。
その時だけであるにせよ、中学生の2割が学んでいるとは予想以上です。
日本は古文漢文が必修なので、昔の言葉を勉強するという点では同じかもしれませんが、ラテン語はもっと古いですからねぇ。私は大人になってから自分の意志で始めましたから、ラテン語ができるなんて格好良いなと思います。けれども義務教育中に組み込むのを時代遅れと感じるのもなんとなく解ります。
「ラテン語を選択するのは優秀な生徒」とフランスの人たちも思うのですね。。
子供向けの小説には、良家の子女がラテン語に苦労している場面がよく出てきます。あれを真似して、私も自分がヨーロッパの貴族になった気分で勉強しています。(何事もまずは形から)
そして! 噂のテキストをついに見せていただけて嬉しいです。
見るからに賢くなれそうな表紙ではありませんか。4eと書いてあるのが目についたので、他にもあるのかと見てみました。3eから5eまであったのですが、これは学年のことでしょうか。
『ラテン語への誘い(いざない)』というタイトルも素敵です。