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世界の言語百科

  もう2週間ぐらい前になりますが、図書館からこの本を借りてきました。

               言語百科

  Robert LAFFONT社から出ているこのBouquinsというシリーズ、辞書のような薄い紙を使っていて、大抵どの本も辞書のように分厚いです。この本も1700ページ以上あります。でもこの本は最初から最後まで読む類の本ではありません。

 表紙に赤い小さな字で「世界で話されている3000語の百科辞典」と書いてあります。第一部は言語全般についての説明で、第2部は171の言語についてのカタログになっています。言語によって300から600語ぐらいの語彙のリストがあり、発音や文法についての簡単な説明もあります。Japonais(日本語)も当然入っており、Italien(イタリア語)とJavanais(ジャワ語)の間に位置しています。アルファベット順になっているんです。日本語には8ページ割かれています。第一部の筆記システムの中に日本語のひらがなの一覧表もあります。ちなみに言語カタログの一番最初はAfarという言語に4ページ割かれています。ジブチの言語だということです。(知らなかった。)カタログの最後はZoulou語(ズールー語)です。

 名前も聞いたことのない言語がたくさん入っています。でも言語の種類ってどんどん減ってきていると思うんです。19世紀以降、中央集権化やグローバル化が進み、弱小言語が消えていっています。フランスの中にもフランス語以外の言語があったのですが、ほとんご死語と化しています。ブルトン語など保持に努力している言語もあるので、「死語」などと言ったら怒られそうですが、ブルトン語しか話せない人はもういないはずです。モーパッサンの小説にブルトン語しか話せなくてコミュニケーションが取れなかった、という話があったのでモーパッサンの時代の19世紀にはまだそういうことがフランス国内であったのですね。

 イギリスの横にマン島とういう小さい島がありますが、そこの言語Manxも確か20世紀に最後の話し手が亡くなって死語になってしまいました。日本のアイヌ語も同じような状況だと聞いたことがあります。教養として勉強する人がいても、ネイティブスピーカーが複数いない言語は死語と言えるのかもしれません。幸いマンクスもアイヌ語も音声資料も含む様々な資料を残していますが、世界には資料も残せずに消えてしまった言語がたくさんあると思います。

 動物で絶滅する種があるように、言語も絶滅するんですよね。人類の文化遺産ですから、なるべく絶滅は避け、最低記録を残して欲しい、と語学好きとしては思います。動物も保護が必要なほど数が減ってしまうと絶滅の危機に瀕することになるわけですが、言語の場合、大きな言語の影になって知っていても使うときがない、必要ないということになり、弱体化に加速がかかるように思います。学問的な意味で復活を推奨しても無理がありますよね。時代の流れとは思うものの、存在していた言語が消滅するのはもったいないと思ってしまいます。

 この本からいろいろ数字を拾ってみようと思います。

 まず世界の言語3000語の内訳ですが、

Langues indiennnes d'Amérique du Nord   ...................  50

Languesindiennes d'Amérique latine ............................250

Langues européenes   .......................................................60

Langues d'Asie  .....................................................600 à 800

Langues d'Océanie et d'Austrarie  ......................700 à 800

Langues d'Afrique   ..........................................1000 à 1200

                                                  Total environ                 3000

    随分大雑把な計算ですが、方言などをどこまで別言語にするかはっきりしないのが理由だと思います。ヨーロッパに60もあるなんて意外です。

  Langues les plus parlées du monde(世界で最も話されている言語)となるとうんと減ってしまいます。

Afrique                                                  30

Amérique (langues indiennes)      3 à 5

Asie                                               50 à 55

Europe                                                  28

Total:             entre                   110 et 120

ということはこれ以外の言語はいずれ消滅するかもしれないということでしょうか。本にはこう書いてあります。    

Certaines langues comme l’islandais, le breton, le corse ou le basque, qui n’atteignent  pas un million de locuteurs, ont de fortes chances de survivre grâce à la vigueur de leur culture et qu désir des peuples qui les parlent d’en conserver l’usage.

    D’autres langues, parlées par beaucoup plus d’un million de personnes, risquent qu contraire de disparaître dans la mesure où elles ne se défendent que faiblement contre la langue majoritaire du pays.

 

[拙訳]

 アイスランド語やブルトン語、コルシカ語、バスク語のような話者が100万人に満たない幾つかの言語は、文化の力やこれらの言語を話す人々の言語を存続させようという希望のおかげで、生き残る可能性が強い。

 他の言語は100万人をはるかに上回る話者を持つ言語でも、その国の有力言語への抵抗が弱い場合は消滅する危険がある。

 

 ということはブルトン語のように維持運動が起こっているような言語は大丈夫だと言うことですね。

 

 それから世界の主要言語の話者数も載っていました。

                        Langue maternelle              2e langue de communication   Total

                             (en millions de personnes)

 

Chinois de Pékin       800                                                   200                        1000

Anglais                      350                                                  250                           600

Hindou-Ourdou          350                                                 250                           450

Russe                         165                                                   120                           330

Indonésien-Malais       50                                                   140                         285

Portugais                    160                                                     20                           190

Arabe                          140                                                     30                           180

Bengali                        170                                                    -                               170

Français                       75                                                      60                            135

Japonais                    125                                                      -                              125

Allemand                      90                                                    10                            100

 

   

これを見る限り、日本語は話者数で第10位。国内や近隣に脅威となる別の言語もないですし、生き残れそうですね。ただ、他の有力言語に比べて第二言語として日本語を話す人がほぼないも同然、というところが気になります。母語話者として日本語を話す人が多い、ということは言語のバイタリティーの源になりますが、外国語や第二言語として日本語を話す人が増えれば、多様化、多角化され、言語として生き残る確率が増えると思うのですが・・・。今後日本語を学ぶ外国人が増えていくかどうかは経済力だけではなく、日本が文化的に魅力のある国であるかどうか、他の国とは異なる文化なり価値観なりを提供できるか、という点にかかっているのではないでしょうか。

 普段、家庭内で日本語を普及させようと努力している私としては、日本文化の発展と日本語の学習者の増加を祈っています。

  
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6件のコメント

[C477]

  興味深い本ですね。 
  第二言語として日本語を話す人口がないのですから、日本がこのままどんどん少子化して人口が減れば、それだけ日本語人口が減り続けるということですよね。
  私はのんき者なので、日本から出て見て初めて、そういうことを切実に感じられるようになりました。
  子供達にも、フランスに住んでいるのだからフランス語が話せなくなる心配はない、日本語をもっとがんばるようはっぱをかけています。
  自分自身、日常的にまわりに日本人がいなくて、自分の日本語がだんだんおかしくなってくるのを恐ろしく思います。子供との会話だけではやはり大人のやり取りとはちょっと違いますしね。

[C480]

う〜ん、とっても興味深い記事でした!

多言語話者的観点だけでなく、継承言語的観点でも、がんばって日本語、
教えないといけないなあと改めて思いました。いや、我が家の場合は元々
後者のほうに重きを置いてたように思いますが。

すごく面白そうな内容で心惹かれますが、.......難しいんだろうなぁ......^^;

[C482]

 「マンクス」といえばマン島原産の猫を思い出しますね。
 英NORTON社の美しい市販レーサーMANXの名前の由来でもあります。
 言語と関係なくてすみません(^-^;

 日本語の普及については遠くない将来に労働力の市場開放を余儀なくされるでしょうから、そのあたりでブームが起きるのではないかと思っています。その頃まで日本が魅力的な市場であれば良いのですが・・・
  • 2007-12-15
  • てつ
  • URL
  • 編集

[C484] コメントありがとうございます。

*grapyさんへ

 そうですね。海外に居ると日本に居るのとはまた違った視点で日本や日本語のことが気になりますよね。
 日本語は書字システムが複雑なので、海外にいて読み書きまで自在になるには、かなりの努力が必要ですよね。私も子供が小学生ぐらいのうちに出来るだけ、いろいろ教えておこうと思っています。でも問題は家庭での会話って同じような話が多いので語彙が増えないんですよね。Grapyさんのお宅では精力的に読み聞かせなどをしていらっしゃるようで、大切なことだと思います。うちはもう読み聞かせる年齢ではない子供が出てきたこともあって、なかなかやりにくくなっています。

*とくだいままさんへ

 私も家庭語としての日本語というのも大切だと思っています。別にバイリンガルと言われるようなレベルでなくてもいいので、やはりなんらかの形で知っていて欲しいですよね。

 この本のフランス語は、科学的、説明的な本ですから文学書ほど難しくありません。事実関係を把握できればいいからです。でもとにかく重くて分厚く、量が多いんですよ。全部読むものではないと分かっていても、気軽に手に取ろうという気が薄れるのは確かですね。

*てつさんへ

 マンクスって、そうでしたね。猫もいたんですよね。猫は絶滅していないのでしょうか。(言語とは関係ないので大丈夫ですかね。)
 猫のしなやかな肢体をイメージしたバイクなのでしょうか。(バイクですよね。)

 労働力の市場開放! やはり日本もそういう状況に来ているのですね。豊かさを知った国民は、重労働の肉体労働を嫌がる傾向にあるので、それを受け入れることができる労働力を外から導入する必要が出てくるわけですね。(知的労働よりも肉体労働の確率が高いと予想して勝手に書いていますが、実際、言葉の問題の少ない労働作業の方が知的労働より導入しやすいですよね。)
 しかしですね、これは今ヨーロッパ社会が抱えている移民の複雑な問題も、のちのち抱えることもある、ということですよ。フランスでは1960年代の景気のいいときに外国人労働者を雇い入れたのですが、その後の不況で不必要になったから国に帰れ、というわけには行きません。その人たちだって国を離れて長い時が経ち本国に帰れる場所がないこともありますし、2世にとってはフランスが故郷ですから。そして不況で解雇の憂き目にあい、失業に悩むのはこれらのフランス語が不自由な人たちである確率が高く、犯罪の増加や社会不安にもつながっています。
 この経験で学んだのは、移民を受け入れるときは知的階級から労働者階級までさまざまの階級を同一国から受け入れること。本国でもはみ出し者だった、というような人たちを同一国から大量に受け入れないこと、ということのようです。同郷の移民同士の相互援助も期待できますし、帰るに帰るところもない移民の人数を減らすことにつながるからでしょう。
 日本が給与水準が高いという点で魅力的な市場であればあるほど、お金目当てで流れ込む人々が増えると思われ、そういう人たちが日本語の海外での普及に役立つのか、日本文化の愛好者になるのか、疑問に思います。
 人を相手にしているので、受け入れておいて要らなくなったら帰ってください、と言って済むものではないわけで、治安の良い国という評判の日本の地位も今後危なくなってきそうですね。ただ労働力が不足してる時はそんなことは言っていられないのが難しいところです。
 今までは欧米先進国に追いつけ追い越せで、いろいろな模倣もして公害や環境破壊まで輸入してしまったような気もするので、今度は先例を見て学び、悪影響は避けるかせめて低く抑えるよう、気をつけて欲しいです。

[C485]

第2外国語が日本語、という人が日本にいる場合(様々な理由で、移民してくる人など)日本語スピーカーは増えるということになりますが、それだけ言葉の「揺れ」は激しくなるような気がします。
もともと言葉は生きているものだと思うので、「揺れ」があるのは当然ですが、日本語を一つの言語としてしっかり捉えていかないと、意外と早いうちに消滅の危機も訪れるんじゃないかな、なんて思ったり。ほんと、小学生のうちから英語を!なんて言ってる場合じゃないんじゃないでしょうかねえ。
ところで、某番組で、このままの出生率だと、計算上は西暦3000年には日本の人口は27人になる、と言ってましたが、これも怖いですね(笑)。

[C486] 麻さんへ

 私は常々、日本語は変遷の激しい言語だと思っています。だって20世紀初頭の文章って既に古臭くて分かりにくくないですか。フランス語だと19世紀の文学でも読めますが、日本語の場合、江戸時代の文学って現代国語からすると遠く感じられます。いろんな流行の言い方も流行り廃れがめまぐるしいように思います。
 第2次世界大戦の時代を舞台にした映画では平気で「貴様」とか言っていますが、今、これを言うのはけんかを売る時ですよね。字面からしても丁寧な語なはずなのに二人称が定着せずすぐ侮蔑語になってしまう・・・。特殊な言語事情ですよね。

 すでに揺れが諸言語の中でも激しいのではないかと思うのですが、これに麻さんがおっしゃるような第二言語の語感が加わったらどこへ行くんでしょうねー。
 
 言語の純潔を守るあまり堅苦しくなる過ぎるのは好きじゃないんですが、やはり日本語の場合注意が必要かも・・・。

 え!?西暦3000年には27人?それってもう国じゃないですよね。この数字が本当なら日本語も3000年よりずっと以前に滅亡の危機にさらされそうです。この数字って本当なのでしょうか。私はもういないし、知っている人はこの世にはもう誰も居ないと思うのであまり気になりませんが、(無責任!)その前に日本という国家や、国家の形態が変わっているということもあり得ますね。だってあと1000年後なので、1000年前を考えると全く違ってますから。その前に地球は1000年後も健在なんでしょうか。それのほうが気になります。

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Author:まゆの
フランスに住み始めて早16年。フランス語に限らず語学や語学学習にはいつも関心を持っています。フランス生活についても、個人的な視点で書いていこうと思っています。家族はフランス人の夫プー、長女のえ(12歳)、長男チッチ(8歳)次女奈々(4歳)の5人、プラス2007年8月23日から飼い始めたうさぎのクッキー。

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