今はもう、SNCF(フランス鉄道)に乗ることは年に2-3回になりましたが、フランスに来たばかりの頃は毎日の通勤、通学に鉄道を使っていました。
その頃、日本の鉄道と違って面倒だと思ったことがあります。それはcompostage(切符にパンチを入れること)をしなければならない、ということです。
下の写真にあるような黄色い機械に切符をはさむとパチンと音がして、切符の一部に穴が開き、日付や記号のスタンプが押されます。 (パンチの機械はいろいろあり、オレンジや赤のものもあります。)
この作業をcompostage(コンポスタージュ)と呼び、これでこの切符は電車に乗るために有効になると同時に、払い戻しや交換は出来なくなります。なぜこんな作業を乗客がしなければならないのか。それは改札口がないからです。切符がなくても自由に電車が発着するプラットホームに行けます。(安全上の問題で、近頃はTGVの場合、切符がないとホームに出られないこともあります。)これは出迎えや見送りの場合、自由に用のある電車まで行けるので便利なのですが、電車に乗る時はパンチを忘れないようにしなければなりません。
旅慣れない人はうっかり忘れるかもしれませんし、外国人観光客はそもそもパンチなんて知らない、ということもあると思います。切符の確認は電車に乗る駅でも降りた駅でも行われません。車内で車掌が切符の点検を行います。正しい切符を持っているか、パンチが入っているか見に来るのです。車内で切符を買うことも出来ますが、罰金が加算されるので大変高く付きます。パンチを忘れても罰金です。
パンチの機械は大抵駅のホールと、列車に乗るホームの、ホールに近い側にあります。しかしホームの真ん中に階段で降りてしまうこともありますし、手近なパンチの機械が故障しているということもあります。列車の発車時刻の関係でパンチの機械を探す時間がなかったらどうすればいいでしょうか。あるいは電車に乗った後でパンチを忘れたとか、間違えて違う切符にパンチを入れてしまった、という場合どうすればいいでしょう。
そういう時は、車掌が切符の点検に来る前に、車掌を見つけ出し、事情を説明しましょう。自首すれば罰金はありません。車掌は決まった車両にいるので、食堂車の係員などに聞けば何号車に居るか教えてくれます。
Où est le contrôleur? と聞きます。乗客でもいつもその列車に乗っている人は知っていることもありますし、車掌がどの方向に居るか知っていることもあるので、人に聞いたりして、とにかく探しましょう。
車掌が見つかったら、
J'ai oublié de composter. (パンチを忘れました。)
J'ai composté un mauvais billet. (間違った切符にパンチしてしまいました。)
などと説明します。すると快く切符に小型パンチを入れてサインしてくれます。これでOKです。
私は慌てて電車に飛び乗ってパンチを忘れたこともありますし、忘れてはいなかったけれどもパンチの機械が近くになかったこともありました。また、行きに帰りの切符にパンチを入れてしまったこともあります。いろいろ失敗を重ねて学んだんですよ、とにかく自首せよ、ということを。
でもすごく昔ですが、本当にパンチの存在をすっかり忘れていて、車内で車掌が来たときに「そうだった、そういうのあったんだったー。」という目に遭ったことがあります。このときは英語で「oh,I didn't know.」とかやってごまかし、罰金は免除してくれました。
これも随分前ですが、毎日同じ電車に乗っていたので、切符を買うのに並ぶ時間の節約のために、同じ切符を数枚まとめて買っていた時期がありました。そこで、間違えて使用済みの切符にパンチを入れて(パンチの有無は慣れないと分かりにくいんです。)涼しい顔で電車に乗っていたところ、切符の点検に来た車掌に咎められました。そして運悪く、まだあると思っていた新しい切符がなかったので、罰金を払うことになってしまいました。しかしこのときの車掌の態度が余りに嫌味で失礼だったため、あとで駅の苦情窓口に言いつけ、罰金の一部を返してもらってこともあります。
昔はこうしてSNCFと戦っていたんですよ。このところSNCFの対応も柔軟になってきたのか、私があまり利用しないだけなのか、トラブっている人を見かけなくなりました。
その場で罰金を払えない場合どうなるのか、ですが、ピンクの紙にいろいろ書き込んで渡されます。それを持って後日駅に払いに行くことになるのですが、その場合は罰金が割り増し料金になるらしいです。(と他の人に説明しているのを車内で聞きました。)それでも払わなかった場合、法的手段に入るわけですが、フランスに居住していない人の場合、まさか国外まで追って来ないでしょうね。
さらにもともと切符を買う気なんてないのに電車に乗っている人もいます。罰金も払う気がなく、身分証明書も忘れた、等と言って提示しません。そうなると次の駅で強制下車だそうです。でもまたそこから次の列車に乗り込んで見つかるまで旅を続けます・・・、この方法で結局、タダでどこでも行けるらしいです。(恥を捨てないと無理ですけど。)
私はこのシステム、ちょっと疑問に思うんです。裏技などに詳しいずる賢い人たちはタダで鉄道を利用し、善良で真面目な人が悪気もないのに犯したミスのために罰金を払わされる・・・。罰金だって説明のしようによっては免除になったり割引になったりするわけです。いろいろ言ってみて試す人もいますが、そういうことを考え付かない人は丸々払わされてしまいます。こんな不公平なことになったのも、そもそも改札口が無いからですよね。切符がないと乗れないようにすればいいのに、そうはせず、ミスするのを待って罰金をとる罠のようなシステムに思えたこともあります。
でも、もうこのやり方が習慣になっているので、改札口を設けたら非難が出るでしょうね。お金が無くて切符が買えなくても、なんとか潜り込める今の制度は弱者に優しい制度とも言えますから。
パリのメトロでも、お金を払わずにいつも利用している、という人たちがいます。でもこちらは自動改札の機械を導入して、少しでも無賃乗車が減るようにしているようです。(でもメトロの駅を出るときに切符が要らないことが多いので、なんとかごまかして入り込む方法があるようです。)考えようによっては世知辛い世の中になってきたのかもしれませんが、無賃乗車が多すぎるからメトロの料金が値上がりするのよー、とも思います。
Author:まゆの
フランスに住み始めて早16年。フランス語に限らず語学や語学学習にはいつも関心を持っています。フランス生活についても、個人的な視点で書いていこうと思っています。家族はフランス人の夫プー、長女のえ(12歳)、長男チッチ(8歳)次女奈々(4歳)の5人、プラス2007年8月23日から飼い始めたうさぎのクッキー。
ホームへの入り口に機械を置いておく方がわかりやすいように思いますが。旅行者や留学生など慣れない人にはちょっと難しそうですね。
パリのメトロは無賃乗車しやすいと聞いたことがあります。ただし見つかると大変な目に遭うので、旅行に行っても真似をしないようにとも聞きます。
まゆの様のSNCFとの戦いの軌跡を楽しませていただきました。いろいろと駆け引きが必要なのですね〜。私は電車でそういうピンチに陥ったことはありませんが、地下鉄が1駅200円は高いなと常々思っています。