ヴェルサイユの翌日は、子供たちとモンマルトルへ行きました。パリへは何度も来ている子供たちですが、観光スポットに連れて行ったことはあまりなく、モンマルトルとかサクレクールとか聞いても知らないようでした。
モンマルトルの丘の上に立つ有名なサクレクール寺院、これです。

フランス語の正式名称はBasilique du Sacré-Coeur de Montmartre(モンマルトルのサクレクール大聖堂)です。通称、単にle Sacré-Coeurと呼ばれています。
1875年から1914年にかけて建設されました。パリの最初の司教だった聖レミが、3世紀に信仰のために斬首刑に処せられた場所に建てられた、と寺院内で配布されていたパンフレットに書いてありました。
サクレクールに行くためにメトロのAnversという駅で降りた時に、子供が「モンマルトルってどんなところなの?」と聞いてきました。そこで「昨日はRoyaleだったけど、今日は全然違うの。安いものがいろいろ売っていてごちゃごちゃしてる。そこが面白いの。」と言いました。子供たちはそこで周囲を見回し、歩いている人たちの雰囲気や駅付近にある布地のディスカウントショップや安売りの洋品店の山のように商品が積んである雑然とした雰囲気を見てとり、「ふーん、本当だー。」といっておりました。
サクレクール目指してずっと坂や階段を上っていきます。疲れて文句を言うかと思っていましたが、物売りがごちゃごちゃとみやげ物を売っていたり、芸人が芸を披露していたりするので、気が紛れたのかどんどん進みました。このあたりはいつも少しお祭りのような雰囲気なのです。
サクレクール前の階段ではハープ奏者がハープを奏でており、美しい音色が静かに響いて、道行く人が立ち止まって聞き入っていました。子供たちも階段に腰掛けて、しばし聞いていました。このとき弾いていたのは映画「タイタニック」の音楽でした。
寺院前の階段上からはパリが一望に見渡せてきれいです。いろんな人が記念写真を撮っていましたが、ちょっと煙ったような日でベストではないと思い、私は写真は撮りませんでした。
サクレクールの中に入るとちょうとミサの時間で、オルガンや合唱が響いていました。ミサの邪魔にならないように静かに内部を見学し、写真撮影も控えました。チッチは、寺院内の売店でコレクション中の造幣局発行の記念メダルを見つけて買いました。もちろんサクレクールの図柄入りです。昨日買ったヴェルサイユのメダルと比べて見入っていました。
モンマルトルは芸術家の町として有名ですよね。そこでサクレクールからテルトル広場まで歩きました。広場いっぱいにいろんな画家が作品を並べて売っており、絵を並べた横で別の絵を描いている人もいます。描いているところが見られますし、描いた人が売っているわけですから、話なども出来ますし、楽しいです。
ただ芸術家ですから変わった人も多く、気難しくて無愛想な人もいます。逆に商業的な人もいますし、いかにも絵が好きという感じでにこやかで愛想のよい人もおり、様々です。いろいろな人のいろいろな絵を見られるのがここを訪れる楽しみですね。長女のえはここが大変気に入ったとかで、あちこちの絵を覗き込んだり、ひそひそと私に批評をささやいたり、画家の方と話したりもしていました。
この広場はパリのお土産風の風景画などを売っている画家以外に、似顔絵を描く画家もたくさんいます。それぞれ画風が違うのでそういうのを見るのも楽しいです。ポーズを取っている観光客やその連れの人たちの「似てる、似てる。」とはしゃぐ様子を眺めるのも楽しいですし、通りすがりに「似てるー。」とかつぶやくのもいいです。
子供たちはChacun, son style. (一人一人、それぞれのスタイルがある。)と絵を見て感心していました。そして記念に何か描いてもらいたい、と言い出しました。そんなとき、切り絵で横顔を作る人がいました。お昼ごはんの時間が近く、お腹が空き始めていたので、時間がかかりすぎるのは出来ないと思っていたところに2分で終わる、と言うので頼んでみました。フランス語ではProfile(横顔)という看板が立ててありました。
長女がモデルになり、すぐ出来上がりました。

こんな風に切り始めたときは、どうしてこれが横顔なの?と思いましたが、あっという間に形になっていきました。
これは仕上げです。髪の毛の部分に切れ目を入れています。
切っている紙は白ですが、実はこれは黒い紙の裏側で、折りたたんで2枚一度に切っているんです。紙は黒より白のほうが見やすくて切りやすいのでこうしている、とこの切り絵屋さんが言っていました。だから2枚出来るんです。
なかなか上手く出来上がり、気に入ったので買いました。やってみて気に入らなければ買わなくてもいいから、と言われていたのです。子供一人二枚で15ユーロでした。
チッチは切り絵はいいから顔の絵を描いてもらいたい、と言うので、まずこの付近のレストランに昼食を食べに行きました。
食事の後、似顔絵を描いてもらおうと、またこの広場に戻ってきました。いろんな画風があり、漫画風の面白い似顔絵もありますし、モダンな画風のものもあるのですが、私はオーソドックスな写実的なのが欲しいと思いました。さっき見ていたときに良さそうな人がいたのですが、その人は新しいモデルの似顔絵にとりかかったばかりで、当分手が空きそうにありません。第二候補も忙しそうだったので第三候補の方に頼みました。描き終わって暇そうにしていたので、値段を交渉してみました。言い値は子供一人30ユーロだったのですが、二人を一枚に入れて欲しいから二人で50ユーロ、と言ったところ、しぶしぶ承諾してくれました。
ヴラジミールというお名前のこの人は、セピア色のパステルで30分ほどで二人を描きあげました。仕事中の写真を取るのもOKしてくださいました。これは一人目の長女を描いているところです。イーゼルに架かっているのは自画像です。

できあがりは今ひとつそっくりではなかったのですが、普段はどたばたうるさいのに大人しくポーズを取っているチッチがかわいく、良い記念となりました。
この界隈は19世紀の雰囲気を残す村のような雰囲気で、昔の猥雑とした芸術家の村の様子を今も残しています。

観光客向けの小物屋さんやカフェやレストランも豊富です。
テルトル広場から散歩を楽しみながら歩き、ダリ美術館を見て(ここは入場料のわりに見るものがありません。ダリの大ファンという方以外は行かなくていいと思います。)ぐるっと回って、かつてランボーが他の芸術家たちと住んでいたという家の前を通ってメトロの駅Pigaleの方に降りて行く途中、こんな看板がある店を見つけました。
古道具やさんらしく、あまり脈略のないものが雑然と置いてあるお店だったのですが、この看板は「私はその辺にいます。」という意味で、携帯電話の番号が書いてあります。店内を見たい場合、電話すれば来てくれるんでしょうね。そこらのカフェでだべっているか一杯やっているのではないかと思いました。このいい加減さがモンマルトルらしい気がします。
さて降りてきたPigale一帯は「ピガールで働いていた。」と言えば売春をしていたいう意味になるという地区で、暗くなってからは子供と歩きたい場所ではありません。と言っても危険な感じではなくオープンな感じなんですけどね。メトロの駅前の大通りにも、ヌードのキャバレーやSEX SHOPと大書したお店が堂々と軒を並べています。
子供たちもCabaret(キャバレー)の名に惹かれてお店の看板や飾ってある写真をちらりと見ていました。フランス語のキャバレーはナイトクラブのことで、手品や冗談や曲芸のショーもありますから、普段テレビで見ているキャバレーのショーを思い浮かべたようです。でも見えたのは派手な下着の女の人やお尻が見えている人の写真で、「ここは裸を見せるところなの?」と質問されました。「そうよ、ここはデカダンスの町だからね。」と言うと、「男の子はこういうのを見るのが好きなの?」とのえ。チッチが険しい顔をしています。「チッチも大きくなったら、こういうのが見たくなるのかもねー。」と言ったら眉をひそめ口を尖らせていました。その顔を見て笑いながらピガールのメトロの階段を降りて、帰途に着きました。
パリの芸術と退廃を味わった一日でした。
Author:まゆの
フランスに住み始めて早16年。フランス語に限らず語学や語学学習にはいつも関心を持っています。フランス生活についても、個人的な視点で書いていこうと思っています。家族はフランス人の夫プー、長女のえ(12歳)、長男チッチ(8歳)次女奈々(4歳)の5人、プラス2007年8月23日から飼い始めたうさぎのクッキー。
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