八歳の息子、チッチが今年から学校の授業の一環で、イタリア語を習い始め、運良く、リヨン−トリノの交流プログラムの指定校に選ばれて、イタリアの小学生と交流できることになった、という話は前にしました。(詳しくはこちらの記事。)
昨夜、その説明会があったので行って来ました。前にも書きましたが、交流は2度に渡って行われます。
まず12月始めに一週間、イタリアから同年代のクラスが一クラス、リヨンにやってきます。その子供たちとともに、リヨン市内を流れるソーヌ川・ローヌ川に浮かぶpéniche(底の平たい川船)で寝泊りして生活することになっています。(この機会に船関係のフランス語の語彙を復習したい方はこちらの記事へ。)
そして4月には、今度はチッチたちのクラスがトリノへ行き、リヨンに来ていた子たちと再会し、一人ずつcorrespondantと呼ばれる交流相手が決まっているので、昼間はその子供と行動を共にし、夜はその子の家庭にお世話になるのだそうです。フランス人のクラスメートと離れて一人でホストファミリーのお宅にお世話になるわけで、先生や親も居ませんし、本当に得がたい経験になると思います。
そして12月から4月までの間、またイタリアから帰ってきてからも、クラスぐるみ、あるいは個人レベルでインターネットなどでメールや写真を交換したりして、交流を行うということでした。
チッチたちはイタリア語を学んでいるとは言っても、まだ始めてから日も浅いですし、今から4月まで勉強を続けますが、いくらなんでも生活に不自由の無いぐらいにイタリア語が流暢になるとは思えません。
どうなるのでしょうか。実は、多分大丈夫そうだ、ということがこの説明会で分かりました。
交流相手は公立のインターナショナル・スクールのフランス語クラスだそうです。クラスの半数ぐらいは伊仏バイリンガルで、親の一方がフランス人だったり、フランス語に堪能な親のいる家庭の出身だということです。つまりフランス語は通じるんですよ。でも家庭ではイタリア語で話していることもあるでしょうし、フランスから珍しいお客さんが来ている、ということで、近所の人や親類が遊びに来るかもしれませんから、イタリア語を耳にすることになると思います。
この日のメインは12月の船上生活の説明だったので、船の乗組員が船のスライドを見せながら説明してくれました。船内には2段ベッドの並ぶ寝室、シャワールーム、台所、食堂兼教室、休憩室兼図書室兼集会室、医務室、トイレがあり、明るく清潔そうな雰囲気でした。甲板は屋根がなく、外の風に当たりながら風景を見ることが出来ます。
チッチたちが船に乗っている時期に、リヨンの伝統行事、Fête des lumières(光のお祭り)があります。その時期に詳しくお話するつもりですが、家々の窓やベランダに、ろうそくやランプを飾ります。通りもイリュミネーションで飾られます。夜、家族やカップルで家々の光やイリュミネーションを見るために出かけるお祭りで、この日、町の光を見るために、夜間航行を行うらしいです。保護者の間から羨ましさでため息が漏れました。船の上から見たら本当にきれいに違いありません。冗談で、「その日は親の見学や付き添いが出来るようにして欲しい。」と言う人がいました。
Vous restez toujours sur le même quai pendant la nuit?
(夜はいつも同じところに停泊していますか。)
Non, ça dépend. Je ne peux pas vous dire où on est.
(いいえ、その時によります。どこにいるか言えません。)
海賊みたいじゃないですか。
船で見学地や訪問地まで移動するそうで、単なる宿泊所ではないんです。寝泊りと食事は船上ですが、いろいろな活動は陸上で行われます。と言ってもリヨン近郊に限られているので、遠くまで行くわけではありません。
「遠くには行っていないのだから探せ!」とか「スパイをやらなきゃ。」とかいう発言がありました。子供が一週間家を離れるので、親としてはこっそり見に行ったり、写真を撮ったりしたいわけなんです。何日目かまだ決まっていないようでしたが、一日、チッチたちの学校の近所にある歴史建造物を見学し、ついでにイタリアの子たちを学校に案内する、という日が予定に入っていました。「この日が狙い目だ。学校の近所で待ち構えていればいい。」とか言う人もいて、みんなで笑いました。
こんな良いプログラムに参加できて運がよかった、私も一緒に船に乗って楽しみたい、という雰囲気の中、冗談もいろいろ出て、楽しい集会でした。
そして船の話が終わり、4月のトリノ行きの説明になりました。ここで、一人一人、交流相手の家庭にホームステイする、という説明がなされました。
C'est super. ça leur fera du bien.
(それはすごい。それは子供たちに良い。)
と隣の人とささやき合う声が聞こえ、私自身もそう思いました。
ところがここで、発言を求めたお母さんがいました。その人が言うには、子供への性的虐待の危険があるから、どんな家庭かわからないところに一週間も預けられない、と言うのです。船の生活のように集団生活ならいいが、個人の家は危険すぎる、と言うのです。それからもう一人のお母さんが「うちの娘は引っ込み思案で知らない家庭には入れない、虐待なども心配だ。」と賛同しました。「リスクがゼロ、ということはないですがねー・・・」と言う人もいて、全体としてはそんな変な心配は必要ない、という雰囲気でしたが、なんだか嫌な感じでした。
うちもバイリンガル家庭なので想像できるのですが、トリノの交流相手の家庭は、子供のフランス語教育に心を砕いていると思います。4年前から毎年参加しているので、今までの評判なども聞いていて、楽しみにしているのではないでしょうか。トリノはフランスから近いですから、休暇などでよくフランスに来ているとは思いますが、同年齢の友達がいるとは限りませんし、従兄弟やいつも同じ友達と、交流で会ったイタリア語を学ぶ友達では違いますし、歓迎こそすれ虐待なんてまず無いと思います。
虐待のような深刻なことにはならないにしても、善意が通じなかったり、ホストファミリーとなんとなく馬が合わなかったり、想像していた家庭とは違っていた、ということはあると思います。でも、それは行かないと分からないことですよね。
この虐待を恐れるお母さん方は、一週間心配するぐらいなら、行かない方がマシだ、とまで言っていました。先生は、「イタリアでは小学校の間はずっと同じ担任なので、引率の先生にとっては4年前から知っている家庭で、問題がないと分かっているからプログラムに参加している。それにいい学校として評判の学校で、恵まれた知的な家庭が多い。」と説明しました。でも二人のお母さんは「金持ちだからって虐待がないとは言えない。世間的には立派な人が影で悪いことをしていることもある。担任の先生でも影でどんなことをしているか、全ては分からない。」と反論するんです。「信用できないなら、不参加にしてください。Tant pis pour elles! (お子さんたちには残念ですけど。)」と先生も気を悪くしていました。
反対派のお母さんの一人は「あなた方を信用していないんじゃないです。ただ知らない家庭は困る、と言っているだけです。」と言い続け、もう一人は「信用とかそういうことではない。でも各個人の考え方があるので尊重して欲しい。」と言っていました。
でもこの人たちの意見を尊重したら、交流プログラムは実現しないと思います。知らないところには行かない、という考えが既に「交流」とあい反するものだからです。私は、「知らない家庭じゃないでしょう。リヨンで会って友達になった子供の家庭なんだから。」と説得を試みましたが、理解してもらえませんでした。
あとで、他のお母さんや先生が
Si on commence à dire les choses comme ça, on ne vit plus.
(あんなことを言い出したら、やっていけないわ。)
と言っていました。
このプログラムは希望者を募って行うものではなく、指定されたクラスが参加するものなので、国際交流がどんなものなのか根本的に分かっていない、外国に行った経験もなく、ホームステイなどしたこともないし興味もない、という無理解な人も中にはいるのだな、と思いましたが、前半和やかだった分、余計に後味の悪い説明会になってしまいました。私の周囲の保護者の方たちは、このプログラムのイタリア行きを喜んでいる人たちばかりだったので、こういう人たちの存在を知ってちょっとショックでした。
ところでトリノはフランス語でTurin(チュランと発音)。「トリノの人」はTurinoisです。説明会の間、les enfants turinois(トリノの子供たち), les enseignants turinois(トリノの先生), les familles turinoises(トリノの家庭)と頻繁に出てきました。
Author:まゆの
フランスに住み始めて早16年。フランス語に限らず語学や語学学習にはいつも関心を持っています。フランス生活についても、個人的な視点で書いていこうと思っています。家族はフランス人の夫プー、長女のえ(12歳)、長男チッチ(8歳)次女奈々(4歳)の5人、プラス2007年8月23日から飼い始めたうさぎのクッキー。
1クラス丸ごと行き来する、というのが私にはとても大きなことに思えます。日本でも外国の提携校と交換留学する学校はありますが、たいてい代表の生徒が何人か行くだけの特別なイベントです。陸続きのヨーロッパでは、外国へ行くことは日本人の感覚よりずっと気楽なものなのでしょうか。
心配のあまり否定的な感情を持つ親御さんがいらっしゃったのは残念でしたね。確かに100%安全と云い切ることは出来ないと思います。でもそれは家族旅行でも、はたまた学校へ行くだけのことでもどんな危険が潜んでいるか解らないのですから、先生方が十分な配慮をしてくださっているのを信用して、子供達が貴重な経験の機会を得られたことを喜べたら良いのに....と思います。
トリノとTurin、全然発音が違うのですね。これだから固有名詞の仏語綴りを調べようとすると上手くいかないのです。私だったらTの次はoかrだと思うはずです。
チッチさんのイタリア語はいかがですか。挨拶ぐらいならペラペラでしょうか。